エッセイ

旅のつばくろ

新幹線に乗るという体験は、本来、魅力的なものだと思う。なぜなら新幹線は、旅を想起させるものであり、まだ見ぬ新しい世界へと連れて行ってくれる、何か象徴のようなものに感じられるからだ。 しかし社会人という切り口で見てみると、必ずしもそう感じられ...

ハンカチのすゝめ

私はオシャレには疎い。普段からファッション誌を読むこともないし、これといって好きなブランドがあるわけでもない。値段も全然気にはしない。 例えば、靴下は4足990円のユニクロのものを履いている。片方の靴下が傷んだとしても、左右セットで捨てるよ...

ロードスターに乗る理由

今年も自動車の納税通知書が届いた。仙台ナンバーに変わって初めての通知書だが、いかにも役所っぽいお堅いデザインの封筒と、今頃という時期が重なって、一目でそれと分かった。 この通知を見ると陰鬱な気持ちがよぎるのは、毎年のことだ。封を切ると自然と...

手ぶらで出掛ける気楽さを

くの字に折れ曲がった紙幣をレジのトレーに出すというのが好きになれず、昔から長財布を愛用してきた。 最初に長財布を手にしたのは、高校生の頃だったかと思う。今思えば、結構マセた高校生だったのかもしれない。 長財布であることだけでなく、それが薄手...

味覚の閾値

世の中、ラーメン好きで溢れている。さすがに三十代ともなると飲み会後にラーメンでシメるということは無くなったが、周囲を見渡せば相変わらずラーメン道を極めんとする友人・同僚は数多い。皆さんの周りにも、そういう人が何人かはいるだろう。 そんなラー...

自室を持つということ

昔、妻の実家に1ヶ月ほど、長期で滞在したことがあった。出産を予定していた子供がうまくいかず、妻が精神的にかなり不安定だったため、ご両親のもとで療養することになったのだが、どういうわけか話の流れで、私も一緒にお世話になってしまったのである。そ...