手ぶらで出掛ける気楽さ

会計の際、くの字に折れ曲がった紙幣をトレーに出す、というのがどうにも格好悪く感じられ、学生の頃から薄手の長財布を愛用してきた。高校生で長財布を持っているのは、今思えばかなりマセていたのかもしれないが、強いこだわりがあったので、特に気にはならなかった。

薄手、というのも重要なポイントだ。ポイントカードやレシートを沢山挟み込んだ、ハンバーガーみたいな二つ折り財布を無理矢理お尻のポケットに突っ込んでいる人をたまに見かけるが、僕にはよく理解できない。体に密着させていて、違和感は無いのだろうか。

とはいえ長財布も、お尻のポケットとは、実は相性が悪い。財布の上半分が思いっきりはみ出しているのは、格好悪い以上にかなり危ない(そういう人もたまにいるが)。ジャケットがあれば裏ポケットに収められるのだが、薄着の夏は困りものだ。頑張って薄手のジャケットを羽織ってみたりもしたが、とても耐えられたものじゃない。

そんなこんなで、 たかだか財布1つのために 鞄を持ち歩かざるを得なかった。なるべく小さいものを選ぶようにしてきたが、どんなに小さくても鞄は鞄。何かを携えていると、少なからずそれに縛られているという感覚があった。何となく窮屈さを感じてはいたが、一方で、外出とはそんなものだと割り切ってきた節もあった。

ところが先日、普段使いの小さいショルダーバッグがついに壊れてしまった。ストラップの根本が割れ始め、今にも千切れそうになっている。新しいものを買うべきかとしばらく悩んだが、パッとしたものも特に見つからない。

悶々としているうち、ふと長財布を諦めてみるかと思うに至った。考えてみれば、キャッシュレス化が進んでいる今時分、くの字に折れ曲がった紙幣を取り出すシーンもほとんど無くなったではないか。ちゃんと探してみれば、薄手の二つ折り財布というのがあるらしい。世の中、同じようなことを考えている人がいくらでもいるものだ。

ところが、いざ入手してみると、今度はカードがあまり入らない。やはり薄さと収納力は両立できないのか。いやしかし、マイカー通勤なので免許証は必須だ。クレジットカードだって持たないわけにはいかない。Tポイントもポンタもビックカメラもヨドバシも、貯められるポイントはしっかり貯めたい。僕は別に、ミニマリストを気取りたいわけではないのだ。

と、いろいろ悩んだ末、ポイントカードとSuicaはこの際、全部スマホアプリに置き換えることにした。カードは免許証とクレジットカードだけにして、アプリが無い弱小ポイントカードは全て切り捨てる。よく考えてほしい! 僅かばかりのポイント欲しさに、お店の選択肢を絞るなんて、むしろ生活を貧しくしてしまうではないか(とポイントアプリを立ち上げながら思うのである)。

こうして僕は、晴れて手ぶらで外出できるようになった。鞄が無いって素晴らしい。どことなく背筋が伸びたような感覚だ。ショーウィンドウに映るシルエットも、スッキリとした印象に見える。そんなに重くはないながらも、あいつはやっぱり僕の体を縛り付けていたのだ。

この話は、男性はともかく、手ぶらで出かけることなんて考えられないであろう女性には、ちょっと賛同が得られないかもしれない。でも、これを読んで感じるところがある人は、ぜひ試してほしい。ちょっとした手荷物がいかに身体的負担を強いているか、とてもよくわかるはずだ。


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