ハンカチのすゝめ

私はオシャレには疎い。普段からファッション誌を読むこともないし、これといって好きなブランドがあるわけでもない。値段も全然気にはしない。

例えば、靴下は4足990円のユニクロのものを履いている。片方の靴下が傷んだとしても、左右セットで捨てるようなことはしない。右と左が同じ仕立てになっているから、別のペアの片方がダメになったときに、残ったもの同士を組み合わせれば、左右関係なく新しいペアになる。ズボラだろうか? 違う、これはモッタイナイ精神に基づいた合理的な判断である。

話を戻すが、みすぼらしい恰好でないことはもちろん大前提として、本人の体型やイメージにマッチしたものを身に着けることができていれば、充分合格である。あとは、TPOにふさわしい範囲で目いっぱい遊ぶことができればなお良いのだろうが、別にそこでお金を掛ける必要はない。これが私の「オシャレ」に対する基本的な考えだ。

では、そこに一点だけこだわりを持つとしたらどうか。靴、ジャケット、パンツ。時計やメガネといった小物類を挙げる人もいる。オシャレは足元からなどとよく言うが、価値観は人によって様々である。

ここで私は主張したい。こだわるべきは、ハンカチであると。

そんなもの持ってる方が普通でしょう、と思う人もいるかもしれない。そういう人は、今後もハンカチ党の一員として、是非その魅力の喧伝にご尽力賜りたいものだが、最近はハンカチを持たずに外へ繰り出す人も多かろう。デパート、コンビニ、駅の構内。今やどこのトイレにも、エアータオルが当たり前のように設置されている。ハンカチを持たなかったことで恥ずかしい思いをすることは、ほとんど無くなったように思える。

だからこそ、敢えてハンカチという提案をしたい。

例えば、喫茶店で座ろうと思った席のテーブルが濡れていた、ということがよくある。前の人が気が利かなかっただけなのかもしれないが、自分が次の人に対してそんなシチュエーションを作ってしまうとしたら、それはとても申し訳ないことだと思う。だから自分が退席するときには、ハンカチでサッとテーブルをさらっておくようにする。

他にも、外した腕時計をテーブルに置く際、テーブルに傷を付けぬよう、ハンカチをさり気なく敷いておくような使い方もできる。

いずれにしろ、ハンカチを使うのはごく僅かな瞬間しか無い。しかし、そうしたほんの一瞬の所作に、気遣いというカッコよさが宿る。それこそが、ハンカチの本当の魅力である。なにも、手にしたハンカチをジャケットの胸ポケットにサッと収めながら化粧室から出てくる姿がカッコイイというわけではない。

加えて、ハンカチは安い。1,000円程度も出せば、そこそこのブランドのものが買えてしまう。ここぞというときにチラ見せするくらいの方が、ウン万円もする靴やジャケットをドヤ顔で見せつけるよりもずっとオシャレではないか。

ハンカチを持たずとも日々困らないこの時代にあって、敢えてハンカチを持つ。このことは、周りにいるその他大勢から差別化することにもなろう。取り敢えずは、結婚式の引き出物でも何でもいい。一度も使われずひっそりと眠るハンカチが、あなたのタンスにも1枚くらいあるはずだ。

さあ、今日からあなたもハンカチを持って、街に出よう。

出張で神戸へ立ち寄った際に見つけたハンカチが、今は一番気に入っている。

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