名前が覚えられない

人の名前を覚えることが苦手だ。新聞とか雑誌記事の冒頭に顔写真付きの人物紹介が載っていたりするが、読んでいる間は覚えていても、次の記事に進む頃にはもう忘れている。読み終えたときに「ちなみにこれは誰の事を書いていたんだっけ?」と思い返すようにしているのだが、パッと出てきたためしが無い。仕方なく冒頭に戻ってもう一度人物紹介を眺め、「あぁ、ヤマダさんだったな」となる。

ところが、小説やノンフィクション作品に出てくるキャラクターは、なぜかスイスイと入ってくる。登場人物とその場の状況がセットになっているから、先々読み進めたときに「あぁ、この人はさっき○○してたヤツだな」と思い出すことができる。だから、決して記憶力が悪いわけではない。

不思議なことに、顔写真と名字だけだとなかなか記憶に残らないのに、なぜか下の名前だとスッと落ちてくることがある。一度など「ほら、えーっと、あの人。そう、マリコ。何マリコだっけ?」ということがあった。親しい間柄でもないのにいきなり下の名前で呼ぶとは、なんと失礼なヤツか。

そんな感じだと仕事でも困るのではないかと思われるかもしれないが、そんなことはない。直接対面するときは、顔写真の場合とは違って無数の情報が紐付いてくるから、記憶力はしっかり強化されている。冒頭の「ヤマダさん」みたいに、再確認した後、更に別の記事を読んでからもう一度思い出そうとしても、やっぱり思い出せない、ということはない。後日、本人から電話を頂いたりした際は、ちゃんと「先日はありがとうございました」と言うことができる(当然だ)。

それでも、1つだけ困っていることがある。

長らく横浜ベイスターズのファンをしている。豊橋に引っ越してもう6年になるが、中日に寝返ろうと思ったことは1度としてない。中京地区なので、やはりテレビは中日ファンを大切にする。ベイスターズの中継はTBSがBSで時々放送してくれる程度で、横浜ファンとしてはあまりおもしろくない。

それはともかく、長らくプロ野球を楽しんでいるくせに、選手の顔と名前が未だに一致しないのだ。もちろん、我らがベイスターズ軍の先発メンバーくらいはきっちり覚えているが、相手側はというと、そうでもない。4番打者やキャリアの長い選手はまだいいが、プロ入り10年目あたりから徐々に怪しくなってくる。野手として守りに入っている時も含めれば、どの選手も大体画面のどこかには映ってはいるものの、本名のテロップが映るのは、せいぜい打席に入っている時くらい。1試合で4回くらいは打席に立つから、名前を確認するチャンスも同じく4回ということになるのだが、先発の9名を必死になって覚えようとしているうちに、やがて中継ぎやら代打やらが出てくると、いよいよ訳が分からなくなってくる。たまにしか放送しない横浜戦で、前回視聴した時の対戦相手と再び相見えるのが数ヶ月先ということもザラなので、その頃になるときれいサッパリ忘れてしまっている。

そんなことをしていては、いつまで経っても選手の名前が覚えられない。そこで昨年から、選手名鑑を片手に中継を観ることにしたところ、紐付けされる情報の量が増えて多少マシになった。高校野球も碌に観ていないくせに「ほう、この人は仙台育英出身かぁ」などと言いながら楽しく観ている。

しかし、先発の9名が順番に打席に立っているときはいいのだが、代打が入ってくると選手名鑑を捲る手が慌ただしくなる。皆同じキャップを被って一列に並んでいるせいで、目的の選手がなかなか見つからない。選手名鑑の悪いところだ。わたわたしているうちに景気よくパカーンと打ち込まれ、気持ちの準備が整わないうちに形成が逆転してしまうこともある。

最後の手段というわけではないが、今季に入ってからはプロ野球チップスにも手を出してみた。僕が子供だった頃は1袋40円だったと記憶しているが、今は90円もする。その代わりカードが2枚も付いてくるのだ。実質的な値上げには違いないが、オトナの財力を以てすればそんなものは気にならない。むしろ、あの多すぎず少なすぎない絶妙な量のポテトチップスが、ビール1本分にちょうどいい。

そんなわけで、今は1日に2人ずつ、新しい選手を覚えるようにしている。奇跡的に最初の1枚目がベイスターズだったのだが、それ以来、日ハムばかりが出てきて困る。いや、目的はベイスターズではないのだからいいのか。とにかく、今日も僕は新しいプロ野球チップスを1袋空けるつもりだ。

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